日本言語学会第168回大会
期 日:2024年6月29日(土)・30日(日)
会 場:国際基督教大学 (ICU)
※ 大会は現地開催ですが,後日発表動画やポスター資料を期間限定で公開の予定です。
会長:定延 利之
大会運営委員長:松浦 年男
大会実行委員長:李 勝勲
・大会(口頭発表,ポスター発表,ワークショップ)参加者は,Peatixのイベントページからチケットの購入(参加申込・参加費支払い)をお済ませください。(特定商取引法に基づく表記はこちら)
・公開シンポジウムは登録なしでどなたでもご参加いただけます。
・登録にはPeatixアカウントが必要になります。アカウント作成にはメールアドレスやGoogleアカウントなどが使えます。
・参加登録は既に開始されております。お早めにご登録ください。
・参加費
一般会員 2,000円
学生会員 1,000円
一般非会員 3,000円
学生非会員 2,000円
・大会参加費は会員:不課税・非会員:課税(内税)となっております。
・日本言語学会は適格請求書発行事業者の登録番号がございません。
・参加登録なしでも大会には参加できますが,円滑な運営のためにも登録にご協力ください。
・今大会は試行的に全ての発表(口頭発表,ワークショップ,ポスター発表,シンポジウム,会長就任講演)の資料を共有できるページ(資料・動画情報ページ)を作成します。詳細は大会1週間前をめどに参加登録した方にお送りする予定です。
・口頭発表,ワークショップの録画(スクリーンのみ)も資料・動画情報ページで公開します。
・資料・動画情報ページは7月12日(金)頃まで公開予定です。当日会場にお越しになれない方も登録することで閲覧できます。
会長就任講演「より豊かな言語学をめざして」
定延 利之
<要旨>
現代日本語の母語話者100名前後を対象としたアンケート調査の結果をもとに,筆者が悩んできた,極めて身辺的な現象例1~9を紹介し,言語学をより豊かにする方途について論じたい。
1.「このあたりに飲料の販売機ありませんか?」と問われて「えーと」と言い淀む場合,その直後には,相手が望む返答(例「そこを右に曲がったところにあります」)も,望まない返答(例「このあたりは無いと思いますけど」や「ちょっとわかりません」)も現れ得る。だが,「さー」と言い淀む場合,直後には,相手が望まない返答しか現れない。「さー」は,考えても相手が望まない返答しか出せない場合専用の,考え中のことばである。
2.ドライブに行こうとしたものの,車がなぜか動かず,3人が車内で原因を探っている。やがて1人が原因を探り当てた(シフトレバーがニュートラルになったまま)。この時,「あ,ニュートラルだ」という発話は,原因を探り当てれば誰でもできる。だが,「あ,ニュートラルだった」という発話は基本的に,運転座席に座っている者にしかできない。
3.明らかな晴天のもとで「いい天気ですね」と言う隣人の挨拶は,キャッチセールスの挨拶と同じものなのか。
4.「あの人って,話長くない?」と言われて「だ」と返すのは不自然だが,「だね」「だな」と返すのは自然。
5.「まじめだよぉ」「もう待てないよぉ」(いずれも「よ」の音調は高く「ぉ」の音調は低い)は<子供>っぽい発話。「まじめなよぉ,」「松本さんよぉ」(同上)は<下品な男>の発話。
6.森ではぐれた松本氏を探す呼びかけ発話「松本ー」は,末尾の音調が下降しない。下降し得るのは,いま,ここに現実にいる松本氏に呼びかける場合のみ。
7.現在の自己の信念表現「私はカエルは両生類だと思います」は,他者の信念表現「彼は~思っています」とは別形式。しかし過去の場合,自己の信念表現「中学生になるまで私はカエルは爬虫類だと思いました」は不自然で,他者と同様の形式「~思っていました」が自然。
8.「5時にこの店で会おうって,彼と約束したんです」は,小説や劇でも日常会話でも自然。だが,「5時にこの店で会おう。そう彼と約束したんです」は,小説や劇では自然だが,日常会話では不自然。
9.口をとがらせる発話には,子供っぽい不満の発話とは別に,大人の恐縮発話もある。
公開シンポジウム「言語理論とフィールド言語学によるデータの接触点」
<要旨>
言語理論と言語データは密接に関係する:言語データは言語理論のさらなる展開へとつながり、言語理論はフィールドデータの適切な収集方法に影響を与える。近年、言語理論が実証的なフィールドデータによって裏付けされ、両領域の相互作用がより明確になっている。これまで記述が網羅されていなかった言語が詳細に記述されることによって、言語類型論の発展と、音声、音韻、形態、統語などの言語のモジュールに関する理解促進を深めることに貢献した。今回の公開シンポジウムでは、言語理論がフィールド言語学にどのような影響を与えるのか、フィールドデータが共時的ならびに通時的言語理論の展開にどのような可能性を提供するのか、さらに言語類型論やコーパス言語学がフィールドデータからどのような情報を得ることができるのかについて、最新の見解を提供する。
<司会・趣旨説明>
李 勝勲(国際基督教大学)
<登壇者>
内原 洋人(東京外国語大学)「言語理論はフィールド言語学に資するのか:北米諸語の事例から」
山岡 翔(大阪大学/日本学術振興会)「フィールドで得た音声データと音韻理論の接触点:ベトナム語を事例として」
伊藤 智ゆき(東京大学)「1970年代韓国朝鮮語咸鏡道方言の音響音声学的研究」
古本 真(東京外国語大学)「スワヒリ語マクンドゥチ方言の記述における通時的視点」
品川 大輔(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)「パラメター駆動形アプローチによるバントゥ諸語類型論:フィールドデータに基づく一般化の試み」
中川 奈津子(九州大学)「フィールドデータとコーパスに基づく日琉諸語の研究」
情報保障:情報保障を必要とされる方はできるだけ早く学会事務支局(lsj@nacos.com)にお申し出ください。期限は5月29日(水)といたします。
保育室:以下のPDFファイルをご確認の上、5月29日(水)までに lsj.childcare@gmail.com にお申し込みください。