2023年度の論文賞(1件)

諸隈 夕子 氏

「ケチュア語アヤクーチョ方言の示差的目的語標示と情報構造」、『言語研究』163号、pp.111-138 (2022年9月)[本文PDF]

本論文はケチュア語のアヤクーチョ方言における体言化従属節の中で起きる示差的目的語標示(differential object marking:
DOM)と情報構造の関係を調査に基づくデータから論じ、対比的焦点および意外性という概念が目的語標示の動機づけになっていると主張するものである.従来、指摘されてこなかったDOMの情報構造上の機能を見出し、理論的に新たな知見を提示しえている点や、自身の現地調査に基づく丹念でわかりやすい記述を行なっている点が高く評価された.情報構造と示差的標示の関係は他の言語にも通ずる大きなスコープを持つ問題提起であり、本論文における限定的な状況の考察のみではその解決の糸口を示すには不十分であるとの意見もあったが、記述的にも理論的にも言語学上の貢献は大きいと認めうる。以上により、日本言語学会論文賞授賞論文にふさわしいと判断する。

[授賞式(第167回大会、11/12,同志社大学)]
2023年度論文賞授賞式-諸隈氏


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