・白田理人氏
「奄美喜界島小野津方言の一人称代名詞の複数形」
奄美喜界島小野津方言には、一人称複数代名詞に除外形と包括形に加えて、先行文脈または発話場面の登場人物を含む集団を示す形式があるが、このうち、特に除外形ariwaakjaの文脈依存に関して新しい知見が得られたことの報告である。調査は周到に準備され、その結果に基づく手堅い内容の発表であった。代名詞のシステムを考える上で類型論的に価値のある研究である。発表の仕方や質疑応答も好評であった。
・髙橋康徳氏
「上海語変調におけるピッチ下降の音韻特性:実験音韻論的考察」
実証性・理論性・方法論をバランス良く議論しており、方法論的には実験音韻論的手法の有効性を示す好例になっている。「なぜ語頭から3音節目以降で音調下降があるのか」という問いに対して、原因がバウンダリー低音調によるとの主張には説得力があり、今後の研究の発展可能性と新しい意義を秘めた内容であった。発表時の時間配分も適正であり、質疑応答時の対応も真摯であった。
授賞式(第149回大会,11/21,愛媛大学)