・江畑冬生氏
「サハ語(ヤクート語)の勧誘形における「双数」の解釈」
サハ語に特徴的な文法範疇である双数を「聞き手の数」の観点から記述しようとした試みで、「主語の数」の観点からでは説明できなかった事実を説明できることを示した。発表の仕方も優れていた。
・長屋尚典氏
「タガログ語の相互構文」
意味的に重なり合うところもある語彙的相互構文と統語的相互構文の文法的・意味的違いを明らかにしようとした試みで、両者に課される意味的制約の違いを図像性(iconicity)と関連させて説明しようとした点が評価できる。発表の仕方も優れていた。
・橋本大樹氏
「単純語を基体として持つ短縮語形成と韻律構造」
単純語を基体として形成される短縮語をコロンという韻律単位を想定することで説明しようとした試みで、テーマの選択、仮説の提示と検証、先行研究との相対的位置づけ、議論の展開、発表の仕方のいずれにおいても優れている。
・山田敏幸氏
「日本語の多重主語構文に対するカートグラフィーの観点からの分析」
フォーカス句の下の階層にトピックの階層があるとするRizziの考えに異を唱え、じつはそれがフォーカス句であることを、日本語の「は」や「が」が多重に生じる事実を使って論じる試みである。今後のカートグラフィー研究に重要な一石を投じる研究である。発表の仕方も優れていた。
授賞式(第146回大会,6/16,茨城大学)