日本言語学会学会賞

日本言語学会では、学会の研究活動の一層の向上・充実を目的とし、若手会員に主眼を置いて、優れた研究を顕彰するために、
論文賞大会発表賞の2つの賞を創設いたしました。優れた研究論文や研究発表がますます活発に投稿・応募されることを期待しております。
なお、直近の受賞者は以下の通りです。

  • 2024年度の論文賞(2件) [詳細はこちら]
    • 濱田 武志 氏「『文海』の「偽平声」から見る西夏語音韻学の複層性―西夏文字の字音推定の限界の所在について―」
    • 大竹 昌巳 氏「契丹語の音調」
  • 第169回(2024年秋季,北海道大学)大会の大会発表賞(2件) [詳細はこちら]
    • 竹内 士瑛伊 氏「疑問文断片からみる極性疑問文の選言構造について」
    • 谷川 みずき 氏「ノルウェー語の「逆パンケーキ構文」の機能と分布」

過去の受賞者については本ページ下部のリンクよりご覧ください。

○日本言語学会論文賞 (2011年度より実施)

過去2年度(4号分)の『言語研究』に掲載された「論文」の中から、特に優れた論文に対して授与されます(賞状および副賞賞金)。(毎年1件。最大2件)(「日本言語学会論文賞」規程 )

2024年度の論文賞(1件)

濱田 武志 氏

「『文海』の「偽平声」から見る西夏語音韻学の複層性―西夏文字の字音推定の限界の所在について―」、『言語研究』165 号、pp. 59–84 (2024年1月) [本文PDF]

 濱田論文は,西夏語韻書における「偽平声」に着目し綿密な調査分析を行い,西夏語音韻学,漢語音韻学の先行研究を丁寧に検討し,文献言語学にとどまらず言語一般の音韻分析にも大きな示唆を与えうる研究である.当時の西夏人が受容した音韻学が,伝統的な古音学を基礎とし近代的学問の手法を受容し生まれた音韻学と一致しない可能性を念頭に,堅実にデータを掘り下げた秀逸な論考となっている.

授賞式(第169回大会,11/9,北海道大学)

大竹 昌巳 氏

「契丹語の音調」、『言語研究』165 号、pp.85–110 (2024年1月) [本文PDF]

 大竹論文は,契丹語の音調実現について,遼代漢語との対音資料に基づく実証的な調査分析を行い,契丹語の音調および遼代漢語の音調研究に大きな寄与をしうる研究である.過去の言語の音調を,制約のある資料から推察するのは困難なのが一般的だが,著者は契丹小字・漢字とそれらの表記を非常に綿密に調査・研究し,契丹語の音調の一端を提示することに成功したと評価できる.いずれも記述的にも理論的にも言語学上の貢献が大きい論文と認められ,日本言語学会論文賞授賞論文にふさわしいと判断する.

授賞式(第169回大会,11/9,北海道大学)

○日本言語学会大会発表賞 (2011年秋季大会(第143回大会)より実施)

大会における優れた口頭発表・ポスター発表に対して授与されます(賞状および副賞賞金)。(毎回数件)(「日本言語学会大会発表賞」規程 )

第169回(2024年秋季,北海道大学)大会の大会発表賞(2件)

竹内 士瑛伊 氏

「疑問文断片からみる極性疑問文の選言構造について」

 本発表は、極性疑問文を選択疑問文からの削除で形成する Kuroda の主張に依拠して、「~ は?」という断片疑問文への応答のあり方を説明したものである。提案に関する十分な証拠 が示されていないという批判はあったものの、論の整合性は取れていた。配布資料・スライ ド・時間配分などは適切なものであり、質疑に対しても誠実に対応していた。

谷川 みずき 氏

「ノルウェー語の「逆パンケーキ構文」の機能と分布」

 本発表は、主語と述語形容詞の一致・不一致に注目し、先行研究で「パンケーキ構文」と呼ばれる構文とは反対の現象について観察し、主語の有生性と個別性の高さから説明できることを示したものである。調査手法には課題が残るものの、スライドは見やすく、要点を押さえた簡潔な説明が行われ、質疑応答においても適切な対応がなされていた。


コンテンツ