会長挨拶

会長 定延利之(京都大学)

日本言語学会のホームページにようこそ!

日本言語学会は、ことばの科学的研究をサポートする学会です。ことばであれば、時代や地域は問いません。話しことば(しぐさ込み)でも、書きことばでも、もちろん手話でも触手話でも、この学会で取り上げ、論じることができます。学派や主義も問いません。ことばの形のことでも、機能のことでも、文法や意味、そして人間や社会とのつながりのことでも、この学会は歓迎します。

春と秋に開かれる大会や夏期講座に参加すれば、ことばの知識だけでなく、研究仲間も得ることができるでしょう。学会誌『言語研究』に投稿すれば、専門的な見地からアドバイスをもらえ、自分の考察をさらに深めることができます。ぜひ、私たちと一緒に学び合いましょう!

自己紹介が遅れてしまいましたが、このたび福井直樹先生の後任として会長をつとめることになりました、定延利之(さだのぶ・としゆき)と申します。私は現代日本語を主軸とした文法の研究をしています。生まれてから自分がずっと話している言語ですから、他の言語であれば必要となる、さまざまな苦労がありません。歴代の会長が、まさに「ザ・言語学」と言うべき先生方であったことを思うと、なんとも申しわけない気持ちです。

私がこの学会に入ったのは35年前、大学院生の頃です。当時はいわゆる「第5世代コンピュータ」プロジェクトの時代で、人間と対話し言語を翻訳してくれる人工知能の開発が国家レベルで進められ、私自身も情報処理研究者との共同研究の仕事をいただいていました。「コンピュータの情報処理能力は10年経てば100倍になります。いまは無理でも、20年後は1万倍、30年後は100万倍のデータを扱えますから、不可能が可能になりますよ」と、当時のある情報処理研究者は言っていました。そのことばどおりの世の中になりつつあるようです。そしてAIのパフォーマンスは、言語研究がもはや伝統的な姿のままではいられないような状況を生み出し始めています。

言うまでもないことですが、ことばの研究は、こうした時代の動きに適応して、最新の技術を活用し、さらに新たな形へと発展していくべきでしょう。しかしまた、そうした動きの中で、守るべき部分も、より鮮明になってくるでしょう。人生はデータの集積ではありません。いま・ここの場に生き、人々とことばを交わすことの根本的な意味の究明は、今後も「人間側」にある、「面白い」仕事であり続けます。そうでなければなりません。

これからの3年間、微力ではありますが、学会のために尽くしたいと考えております。会員の皆様には、ご協力をたまわりますようお願い申し上げます。また、まだ会員ではない皆様も、ぜひ言語学会に入会いただき、ことばについて、私たちと一緒に学び、考えていただければ幸いです。