2019年度の論文賞(1件)

倉部慶太氏

“Deaspiration and the Laryngeal Specification of Fricatives in Jinghpaw”『言語研究』第153号(2018年3月), 

 本論文は,ジンポー語(北ビルマ:シナ・チベット語族)の一見異なるいくつかの形態・音韻現象について,無気音化という観点から統一的な説明を提案する。すなわち,無声摩擦音に[+spread glottis]の素性を付与することにより,帯気閉鎖音の無気音化現象を一般的な音韻原理である義務的起伏原理(OCP)から導くことができるという分析である。異質に思える音声群が音韻的に自然類を成すと分析するだけで,一見バラバラな諸現象にシンプルかつ統一的な説明を与えることができることが説得的に主張されており,音声を音韻論的に分析することの重要性を示す論文であると言える。また,フィールドワークを通したデータの収集や堅実な観察など,方法論の面も評価された。以上の理由から,当該論文を日本言語学会論文賞授賞推薦論文としてふさわしいものと判断する。

授賞式(第159回大会,11/17,名古屋学院大学)

2019年度論文賞