・古本 真氏
「スワヒリ語マクンドゥチ方言における主題を標示する指示詞の縮約形」
スワヒリ語マクンデゥチ方言の指示詞縮約形について、鋭い考察を行いバントゥー系言語の主題化の問題に一石を投じた。指示詞の基本形と縮約形の異なる機能を指摘した上で、縮約形が代名詞接辞でないことの立証こそ弱かったものの、縮約形に主題提示機能があることを示唆した。説得力ある論理構成に加え聴衆向けの工夫もなされ、質疑応答への対応も誠実だったが、積極的な反論があってもよかった。
・Asako MATSUDA氏
“Partial Control PRO as an associative plural”
Partial Control が associative plural の構造を持つと仮定することで、部分的解釈に加えて包括的解釈を許すといった、Partial Control 現象の意味的・統語的特徴を見事に説明していた。理論的・経験的にもう一歩深めた分析を聞きたかった印象もあるが、提案された分析の今後の展開にも期待が持てる意欲的な発表であった。英語の発表も流暢で聞きやすく、質疑応答も的確だった。
・矢野 雅貴氏(共同発表者:新国 佳祐氏, 小野 創氏, 木山幸子氏, 里 麻奈美氏, TANG Apay Ai-yu
氏, 安永大地氏, 小泉 政利氏)
「タロコ語文理解実験からみる基本語順と普遍的認知特性について―事象関連電位を指標として―」
研究の少ないOS型言語の貴重なテ?ータを収集し、基本語順と普遍的認知特性の両方の関与を示した内容でインハ?クトも大きい。綿密に計画された実験は、解釈も適切であった。全体に筆頭著者としての関与・貢献度が十分窺え、質疑応答でも高い水準の応対をしていた。唯一、ERPに関する前提が説明不足気味だった難点はあるものの、総体としてきわめて高い評価を得た。
授賞式(第155回大会,11/26,立命館大学)